全部、嘘。

妄想と日常と噓

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

私の獣

アパートの前でケモノを拾った。 このへんでは見ないタイプだったから、そのまま連れて帰った。 深めの皿にタオルを敷いて、その上に乗せる。 「…ぴ、ぴぴっ」 「お前、どこから来たの」 「ぴぴ、ぴっ!」 「まだ小さいもんね、喋るのは無理か…なんか食べる…

勝手に盛り上がるから許して

ずっずさん、お誕生日おめでとうございます。 47歳なんて見えません。若々しくて男前です。 もしずっずさんが自分の父親だったら友達に「うちのパパかっこいいからさぁ~わたし結婚できないかもぉ~♡」と自慢しまくります。 これからも風さんと一緒に、嬉し…

うん?

変な話と風さんのことしか書いてないので、たまには日常のことをと思ったけど、取り立てて書くようなこともないなぁ…でも何とかひとつ絞りだした。 スーパーの惣菜コーナーで久しぶりにフライドチキンを買ってきた。 チンして食べようとパックからお皿にうつ…

細胞下の偏愛

私が欲しいのは、あなたじゃなくて。 愛された皮膚の記憶。 熱い舌が触れた記憶。 いつかは朽ちて消えゆく身体だから。 記憶だけは残しておきたいの。 「それは思い出として?」 ええ。あなたが私と一緒にいてくれたという、大切な時間の積み重ね。 「確かに…

さあ、飛べ

目の前に大きな扉が現れた。ああ、とうとう私の番だ。嬉しい。 「開けてもいいし開けなくてもいい。選べ」 「開けたら、どうなるの」 「それは自分の目で確かめろ」 「開けなかったら?」 「それも自分の目で確かめろ」 「・・・あなたは誰」 「お前の守護神…

三度の飯より藤井風

風さんを知ったのは関ジャム。「天才が現れた」って感じで紹介されてた。 何なんのMVが流れて「ひゃーこれまた凄い人が出てき、・・・あんたの歯にはさがったあお、さ・・・え、なに?」と驚いた。あおさ?歌詞にあおさ。しかも方言。なにこの人。 しかも歌…

風さんの「わたし」は何人いるんだろ

風さんの歌詞って「私」「わたし」「ワタシ」「あたし」「アタシ」がけっこういて、どれも別人格で面白い。 親しみを感じるのは『特にない』の彼女。なんか一歩引いてるけど本当は違うのよって部分があって。そうそう、実はそうだよね、うん。と頷いてしまう…

雨に唄えば

買い物に行こうと外へ出たら、地面から空に向かって雨が昇っていた。 あれ。今月って逆転月だっけ。どうしよう、傘しかないし。行くの止めようか。 「ねー。買い物行くのー?」 「え?」 上から声がした。見上げると、大きな絨毯が浮かんでいた。ゆっくりス…

MOVE

身体が伸びる。真っ白な冷たいシーツの上で、アナタの声を聴く。 「これ以上伸びたら消えちゃう」 「消えたらいい」 「そしたら、もうアナタに触れられないわ」 「触れなくていい」 冷たいひと。一度も私を見ない。 ここにいない誰かを思い浮かべて、その目…

藤井風という沼

ずぶずぶ・・・ずぶずぶずぶ・・・ こんなに深い沼は初めてなので、どうしていいか分からない。 とりあえず毎日聴くことにしている。 歌声を聴いて浄化されるというのも初体験だ。 自分の心は、なんてドス黒く汚いものだったのかと驚く。 藤井風という人を知…

デビルズ・フード

死神が現れた。 「よう、相棒」 「あんたの相棒になった覚えはない」 「そう言うな。お前との付き合いは長いからな。他人とは思えないのさ」 軽やかなステップを踏みながら隣りを歩く。 「そろそろ行かないか、次の世界へ」 「やだね。あんたと行くところな…

ループ

カレンダーから水曜日が消えていた。あの人が来てくれないのも、そのせいだ。 すぐに市役所の水曜日担当の人に電話した。 「私の水曜日が行方不明なんです」 「えーと。三丁目の方ですよね、えー・・・あ、おたくの町内の自治会長さんが食べましたね」 「え…

ようこそパラダイスへ

ああ、まただ。また黒い塊が部屋に転がっている。 「昨日も捨てたのに」 溜息を吐きながらゴミ袋に詰め込んだ。 ずるずる。ズルズル。引きずりながら、沼を目指す。 いつからだろう、この塊が現れるようになったのは。 一時間近くかかって、やっと辿り着いた…

一蓮托生

影が言う。 「おい。俺は自由に動きたいんだよ、ついてくるな」 「そんなこと言われても。あんたは俺の影なんだから仕方ないだろ」 「ふん。誰が好き好んでお前なんか」 「なら離れればいい。俺は一向に困らない」 歩き出す。また文句を言う。 「勝手に歩く…

その先の光

ふと気づくと、知らない場所にいた。廃墟みたいだ。縦長の窓から夕方の光が射し込む。 「その窓は開かないよ」 後ろから声がした。知らない男の子が立っている。 「ここはどこ?」 「知らずに来たの?ここは僕の家だったところ」 そう言って手を広げてくるっ…

似て非なるもの

深い穴を掘っている。何のためなのか分からない。 でも私は穴を掘る。汗だくになって掘り続ける。 2mくらいの深さになった頃。上から声がした。 「お弁当、買うてきたよ」 見上げると、ずいぶん長い間会ってない幼馴染みが微笑んでいた。 珍しいなと思いなが…