全部、嘘。

妄想と日常と噓

いらないわ

夜。足早に駅に向かっていたら、いきなり小悪魔に引き止められた。

「世迷言を授けましょう」

「いらない。急いでるから」

「そう言わずに。損はさせません」

「ほんとに?損しない?」

「はい。なんなら、あなたの今の望みを叶えてあげます」

「なら20分前に戻して。向こうの橋の上から投げられて体がボロボロなの」

「お安い御用です。では、目を瞑って」

「こう?」

ひゅんっ…!一瞬で20分前に戻った。良かった、これで私は痛い思いをしなくて済む。

「望みは叶ったんですよね」

「ええ。ありがとう助かったわ」

「では改めて世迷言を」

「ごめんなさい、急いでるから」

小悪魔の羽根を奪って下へ飛び降りた。私を放り投げたあいつ。絶対に逃がさない。

「すいませーん。あなたにどうしても世迷言を」

「うるさいっ!」

世迷言なんて。そんな意味のないものなんか。

あいつに詰め込んで、今度は私が投げてやる。

 

ぶんっ。