全部、嘘。

妄想と日常と噓

似て非なるもの

深い穴を掘っている。何のためなのか分からない。

でも私は穴を掘る。汗だくになって掘り続ける。

2mくらいの深さになった頃。上から声がした。

「お弁当、買うてきたよ」

見上げると、ずいぶん長い間会ってない幼馴染みが微笑んでいた。

珍しいなと思いながらも、まぁそういうこともあるかと受け入れる。

「食べる?」

「うん。投げて。お茶も」

「うん」

ピニール袋ごと落としてもらった。大好きな唐揚げ弁当だ。最後の食事として相応しい。

「30分経ったら埋めてほしいんやけど」

「分かった。またいつか会えるん?」

「あんたも穴掘るようになったらな。それまでは普通に生きぃや」

「そうやな。じゃ・・・またな」

「ばいばい」

座り込んで冷たい唐揚げを頬張る。美味しい。次の世界にも唐揚げがあるといいな。

やっとラクになれる。もう国民年金とか払わなくていい。生きるだけでお金かかるなんて、もう嫌。

きれいに食べて、お茶を飲み干す。夜空を見上げて、ふぅっと息を吐いた。

もうすぐ、あの星々の仲間入りだ。

土が落ちてきた。

幼馴染みが微笑んでいる。