全部、嘘。

妄想と日常と噓

ループ

カレンダーから水曜日が消えていた。あの人が来てくれないのも、そのせいだ。

すぐに市役所の水曜日担当の人に電話した。

「私の水曜日が行方不明なんです」

「えーと。三丁目の方ですよね、えー・・・あ、おたくの町内の自治会長さんが食べましたね」

「え?どうしてですか」

「さあ。詳しくは本人に聞いてください」

電話を切って急いで自治会長さんの家に向かった。人のものを勝手に食べるなんて。

「おや、いらっしゃい」

「返してください、私の水曜日」

「だってねぇ。あなたいつも泣いてたからさ」

「は?」

「水曜の夜。町中に聴こえるくらいの大きな泣き声で。前々から苦情が出てたからねぇ」

「だからって食べなくても・・・とにかく今ぐ返して」

「また泣くことになるのに・・・分かったよ、あんたのとこのカレンダーにすくぐ戻すから。帰んな」

ピシャッ。勢いよくドアを閉められた。どうして私がキレられるんだろう。悪いのはそっちなのに。

家に戻ってカレンダーを確認すると、無事に水曜日が加えられていた。

良かった。これでまた、あの人が来てくれる。私の身体を隅々まで貪ってくれる。

そう思って、今か今かと待っていたのに。いつまで経っても、あの人は来なかった。

そう。

私は。

水曜日と共に、あの人に食べられてしまった。どうやら、邪魔だったらしい。

ならハッキリそう言ってくれたらいいのに。

 

私は今日も、この人のお腹の中で。

この人が抱く知らない人間を憎んでいる。

 

水曜日じゃなければ良かったの?