全部、嘘。

妄想と日常と噓

一蓮托生

影が言う。

「おい。俺は自由に動きたいんだよ、ついてくるな」

「そんなこと言われても。あんたは俺の影なんだから仕方ないだろ」

「ふん。誰が好き好んでお前なんか」

「なら離れればいい。俺は一向に困らない」

歩き出す。また文句を言う。

「勝手に歩くな」

「うるさいなぁ。そんなに嫌なら、ほら。周りにたくさん人がいるんだからさ。好きなとこ行け」

影がこんなにめんどくさいやつだと思わなかった。

「俺とあんたは一蓮托生だ、一生離れられない。諦めろよ」

「お前が消えればいい」

「あんたも一緒に消えるけどな。おい、ついてくんなよ」

「こっちのセリフだ」

本体であるはずの俺なのに。

知らぬ間に地面にくっついている。

影はどっちだ。