上へ参ります
目が覚めたら、眼球の奥にエレベーターが設置されていた。
ああ…今日はのんびりしようと思ってたのに。
しばらくしてから、ゴマ粒ほどの制服姿の女子高生が枕を這い上がってきた。
「すいません、学校までいいですか」
「何階?」
「35階です」
「分かった。乗って」
「失礼します」
扉を開くと、躊躇することなく飛び込んできた。
「5分くらいかかるけど」
「大丈夫です。助かりました、テストなので」
そう言って、鞄から教科書を取り出してパラパラし始めた。
「あの、今日は1日中ですか、このエレベーター」
「どうして?」
「出来れば、帰りもお願いしたいなって」
「ああ…うん、いいよ。何時くらい?」
「お昼前には終わります」
「じゃあ、12時前に」
「良かった、ありがとうございます」
チーン。
「着いたよ」
扉を開けると「行ってきます!」と勢い良く走って行った。
一旦、1階まで戻って『故障中』の看板を立てておいた。
これで少しは休める。このエレベーターを操るのは、しんどい。
あの子。テストいい点取れるといいな。
そう願いながらウトウトしていた時。
「すいません、子どもが生まれそうなんです乗せて下さい!」と瞼を叩かれた。
ああ、しんどい。でも子どもが生まれ、る…頑張れ自分。
「上へ参ります」