全部、嘘。

妄想と日常と噓

taboo

「背骨が好きよ」

冷たい指先が肌をすべる。

「くすぐったい」

「早く食べたいわ、あなたの骨」

そっか。私この人に食べられるために、ここへ連れてこられたんだっけ。

「美味しくないと思うけど」

「そんなことない。触ったら分かるもの、極上の骨だって」

「どうやって食べるの」

「そうね…シンプルなスープがいいかしら。トロトロになるまて煮込んで飲み干したいわ」

ふふ。楽しみ。あたはワタシの中に入れるのよ、嬉しいでしょ?

耳元で、そう囁く声は。

まるで魔女のよう。

「ね、だから早く。ぐちゃぐちゃに混ざりあいましょう」

食べてあげる。一片も残さずに。

「…痛くないようにして」

「もちろん。安心して、あなたは眠るだけでいいの」

私は残らない。土にも還らない。

ただ、この人の血管へ入って。

いずれ外へ放出されるだけ。

それだけのこと。

熱い舌が背中を這う。

 

溶ける。